ナステントとは?
ナステントの基本的な仕組み
ナステント(nas-tent)は、鼻腔から喉の奥(軟口蓋の先)までを柔らかいチューブで貫通させ、気道の閉塞を防ぐ医療機器です。
日本のベンチャー企業が開発し、2013年に医療機器として認可を受けました。
チューブはシリコン系素材でできており、柔軟性が高く、一晩使用した後は使い捨てる設計になっています。
従来のいびき治療ではマウスピースやCPAP(シーパップ)などが用いられてきましたが、ナステントはより簡単で侵襲性の低い代替手段として注目されています。
特に、いびきや軽度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に対して効果を発揮することが期待されています。
どのような人に使われているか
ナステントは主に次のような人々に使われています:
-
睡眠時にいびきをかく人
-
軽度~中等度の睡眠時無呼吸症候群と診断された人
-
CPAPがどうしても使えない、あるいは拒否感がある人
-
マウスピースでは効果が得られなかった人
-
旅行や出張中など、持ち運びに便利な対策を求める人
医療機器であるため、原則として使用前には医師の診察・適合検査(フィッティング)が必要です。チューブの長さや硬さは個人差に合わせて調整されるため、自己判断での使用は推奨されていません。
ナステントのいびきへの効果
いびきが軽減されるメカニズム
いびきの主な原因は、睡眠中に舌や軟口蓋が喉の奥に沈み込み、空気の通り道(気道)が狭くなることです。このとき、呼吸のたびに粘膜が振動し、いびき音が生じます。
ナステントはこの問題に対し、チューブが気道を物理的に確保することで、空気の通り道を常に開いた状態に保ちます。
これにより、空気がスムーズに流れ、喉の振動=いびき音を大幅に軽減できます。
また、CPAPのように外部機器から空気を送る必要がなく、鼻に挿入するだけで気道の確保ができるという手軽さも大きなメリットです。
実際、医療機関でのフィッティングテストにおいても、装着初日からいびきが大幅に減少したという例も報告されています。
使用者の口コミ・体験談にみる効果
ナステントを実際に使用した人の口コミを見ると、以下のような声が多く見られます。
-
「これまで夫のいびきで毎晩起きていたが、ナステントを使った日から静かに眠れるようになった」(30代女性)
-
「違和感はあったが、いびきがなくなって驚いた。朝の目覚めも良くなった」(40代男性)
-
「マウスピースやCPAPが合わなかったが、これは手軽で続けやすい」(50代男性)
一方で、「慣れるまでに数日は違和感があった」「コストがやや高い」といったやや否定的な意見も一部存在します。
ただ、軽度な症状の人にとっては、非常に有効な選択肢となるケースが多いのが実情です。
ナステントのメリットとデメリット
メリット(使い捨て・非侵襲的・効果実感が早い)
ナステントの魅力は、他の治療法にはない以下のような利点にあります。
-
使い捨てで清潔
毎回使い捨てのため、衛生的で手入れの手間もかかりません。出張や旅行でも持ち運びが簡単です。 -
非侵襲的で身体的な負担が少ない
外科手術とは異なり、チューブを鼻に挿入するだけなので、体への負担が少なく、医療的リスクもほとんどありません。 -
即効性がある
装着初日からいびきの軽減を感じる人も多く、マウスピースやCPAPよりも短期間で効果を実感しやすい傾向にあります。 -
呼吸がしやすい
口を閉じたまま鼻からの呼吸が確保されるため、乾燥や口呼吸による喉の痛みが出にくいのもメリットです。
デメリット(違和感・コスト・医師の診断)
一方で、ナステントには以下のような注意点・課題も存在します。
-
慣れるまでに違和感がある
鼻から喉の奥にかけてチューブが挿入されるため、最初は「喉に何かがあるような感覚」が強く出ることがあります。多くの人は数日で慣れますが、中には断念するケースも。 -
毎日の使用にコストがかかる
1本あたり数百円程度で、1回使い捨てのため、毎晩使用すると月に数千円以上の出費になります。継続使用にはコスト面の計算も必要です。 -
医師の診断とフィッティングが必要
市販されている商品ではなく、医療機関での診察と適合確認(サイズ測定)が必須です。自由診療で扱うクリニックもあるため、価格も施設ごとに異なります。
ナステントの正しい使い方と注意点
装着方法
ナステントの使用は、簡単なようでいて正確さが求められる医療行為でもあります。以下が一般的な使用手順です。
-
鼻の通りを確認する
使用前に鼻づまりがないか確認し、鼻孔の通気性が良い側に装着します。
片側のみの装着が原則です。 -
専用の潤滑剤を塗る
スムーズに挿入できるように、専用ジェルをナステント全体に薄く塗布します。
市販のワセリンやオイルを使うのは推奨されていません。 -
ゆっくりと挿入する
鼻腔に沿って優しく挿入し、奥まで差し込むと自然と喉の奥にチューブが達します。
このとき、咽頭反射(オエッとなる感覚)がある場合もありますが、慣れれば軽減されます。 -
固定テープで鼻に留める
就寝中に抜けないように、ナステントの外端を鼻の皮膚に貼り付けて固定します。 -
朝になったら取り外して廃棄
使い終わったら優しく引き抜き、付属の廃棄用袋などに入れて処分します。
使い回しは絶対に避けてください。
使用時の注意点・副作用について
ナステントの使用に際しては、以下の点に注意しましょう。
-
副作用の可能性
ごく稀に、使用中に鼻出血や喉の違和感を訴える人もいます。これは、挿入時に粘膜を傷つけた場合や過敏な体質が原因です。 -
体調が悪い日は無理に使用しない
風邪や花粉症などで鼻の通りが悪いときは、無理に装着すると逆効果になることがあります。症状が落ち着いてから使用するのが安全です。 -
CPAPとの併用は不可
ナステントはCPAPの代替として使われることが多く、同時に使用することは想定されていません。医師の指示に従い、使い分けましょう。
ナステントをおすすめしたい人・おすすめしない人
効果が期待できるタイプ
ナステントは万人に効果があるわけではありませんが、以下のようなタイプには特におすすめです。
-
軽度〜中等度のいびきや閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に悩んでいる人
ナステントはあくまで気道の軽い閉塞を改善するための補助器具です。重度の無呼吸症候群には対応しきれない可能性がありますが、軽症の人には非常に有効です。 -
マウスピースやCPAPに抵抗がある人
装着の煩わしさや見た目が気になる、マウスピースが合わないといった人にとっては、ナステントのシンプルさが魅力です。 -
短期間だけいびき対策をしたい人
たとえば旅行や出張時、一時的にいびきを抑えたい場合に、ナステントは使い捨てで手軽な選択肢です。 -
同居家族からの苦情がある人
いびきが周囲に迷惑をかけていることが気になる場合、即効性のあるナステントは効果的な選択肢です。
向いていないケース(重度の睡眠時無呼吸症候群など)
一方で、以下のような場合にはナステントが効果を発揮しにくい、あるいは適さないこともあります。
-
重度の睡眠時無呼吸症候群
重症レベルのSAS(睡眠時無呼吸症候群)は、気道の閉塞が強く、ナステントだけでは十分な気道確保ができないことがあります。この場合、CPAPや外科的治療が推奨されます。 -
鼻腔が極端に狭い人や鼻づまりが慢性的な人
ナステントは鼻から挿入するため、鼻の通りが悪いと装着自体が困難になります。 -
異物感に強く反応する人
咽頭反射が強い人や、「喉に何かが触れる感じ」に敏感な人は、ナステントの装着を苦痛に感じる場合があります。 -
継続的な治療を必要とする人
ナステントは一時的な対処には適していますが、長期的な症状改善や根本治療には医師による計画的な対応が必要です。
まとめ
ナステントは、いびきや軽度の睡眠時無呼吸症候群に悩む人にとって、有力な対策手段の一つです。
鼻からチューブを挿入することで物理的に気道を確保し、いびきの原因となる空気の通り道の閉塞を防ぎます。
使い捨てで衛生的、非侵襲的でありながら、即効性のあるいびき対策グッズとして注目されており、
マウスピースやCPAPに抵抗のある人にとっては、日常的に使いやすい選択肢となり得ます。
ただし、ナステントにもデメリットや限界は存在します。
特に、重度の睡眠時無呼吸症候群や鼻腔の構造上の問題を持つ人には効果が不十分なケースもあり、
あくまで医師の診断と指導のもとでの使用が推奨されます。
まずは耳鼻咽喉科や睡眠専門クリニックで自分のいびきの原因を明らかにし、
ナステントが適しているかどうかを判断することが大切です。
参考・引用情報
-
株式会社ゼノフィ「ナステント公式サイト」
https://www.nastent.co.jp/ -
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「睡眠時無呼吸症候群について」
https://www.jibika.or.jp/citizens/disease/sas.html -
睡眠総合ケアクリニック代々木「ナステントの適応と実績」
https://www.suimin-clinic.jp/nastent/
コメント